好きな漫画紹介第4弾は、凪のお暇です。
つい最近、ドラマ化が発表されましたね!!拙宅のブログで紹介なんかしなくても知ってる人が大多数だとは思うのですが、書きたいから書く!それだけだ!
Twitterでも、認知度高い作品の記事も需要あるって言ってくれた人いたからいいよね!
***************************************************************
筋書きを簡単に説明すると、気を遣いすぎて疲れちゃったアラサーOLの凪が、
仕事も部屋も恋人も全部断捨離して、郊外でお暇生活を始めるストーリー。
この作品でまず推せる点が、唯一無二の絵柄。
ちょっとレトロでポップな絵柄はとてもかわいらしく、それだけでも見る価値あり。
このレトロさ、ポップさは逆に新しい。そして、「ああ、この作品はフィクションなんだな」と無意識かつ自動的に読者に思わせる。
それなのに、対照的にストーリーのリアルさといったら!!
いるいる、こんなつらさや闇を抱えてるヒト。
きっと、リアルな絵柄だったらつらくて目をそむけたくなっちゃうかも。
リアルなフィクション。この絵柄は、その点をうまーく強調しています。
作品の中で作者が描く、日本社会、男と女などなどに向ける痛烈な皮肉は、この懐かしくも甘い絵柄の中の絶妙なスパイスとなっています。読者はいつのまにかその「ちょうどよさ」に病みつきになってしまうのです。
その「ちょうどよい」絵柄で描かれる「共感」。
家庭、職場、友達、恋人、SNSなど、現代社会を生きる私たちは、眠っている間以外は常に見える誰か、見えない誰かに囲まれていて、社会の理不尽やおかしさと戦い続けている。そんなとき、「これって理不尽だよね」、「これってつらいよね」って言葉にしてくれてる人がいたら、やっぱりうれしい。私だけじゃないんだ、みんな悩んでるんだって思える。この作品の人気は、ストーリーがおもしろいのはもちろんなんだけど、読者と作品が「共感し、共感される」関係性を築けるところにあるのかもしれない。
まず、読者が、凪に共感する。
主人公の凪は、顔もスタイルも平均以上だと思います。仕事もしっかりこなします。料理も得意です。しかし、とても自己評価が低い。謙虚で奥手な性格です。
この作品に読者が引き込まれる理由としては、凪が抱える「なんだかなぁ」な自分に共感して、同じく自分を変えたいというアラサー女性が多いということだと思います。
・うまく立ち回れなくて、雑用を押し付けられる。
・「それしか言えない」から職場の同僚女性とのトークは「わかるー」で通す。
・SNSは正直読むのが苦痛だけど、友達に無視されてないか気になってずーっと監視しちゃう。(周りの反応の数を気にしちゃうから投稿は少ない)
・そんな自分が周りから見下されていることを感じる、よく周りの人にマウンティングされる。
・男性からもナメられやすい。ナンパや痴漢に遭ったり、自信なさげな男性ばかり声をかけてきたり、モラハラに遭ったりする。
多くのアラサー女性にとって、これこそ「わかる!」でしょう。
気を遣って遣って、人の顔色をうかがうことで自分を護ったり、空っぽな自分がコンプレックスで、それが周りに伝わることが怖い自意識過剰なところがあったり、ときに、「え、私ってこんな扱いされちゃうの?」って悲しくなったり。
多くの人が抱えるコンプレックスな自分を無意識に凪に投影し、読者は凪に思わず共感してしまう。
そして、物語序盤で何もかも捨て自由になった凪を見て、思わず自分も自由になったようにどこかうれしく感じるのです。
次に、作品に共感される。
「作品に共感される」とはどういうことなのかというと、多くの女性がなんとなく抱えているモヤモヤを言語化してくれるということ。「ああそうか、私ってこういう気持ち、こういう考えだったんだ」って教えてくれて、気持ちや考えを代弁してくれる。「そう、それが言いたかったの!」って感じる。私は読んだ直後、「この作品、男性にも読んでほしい!」ってすごく思いました笑
例えばこのシーン。「言ってくれてありがとう!」って感じでした。
いるよねー!自分の彼女(ときには彼女でなくても)をブス呼ばわりする男!自分が冗談のつもりだったら許されると思ってる。状況だとかおまえの「つもり」だとかどうでもいいんじゃ!言われる側の気持ちを考えろ!「ブス」ってワードチョイスの時点で最低だし最悪。上の画像みたいに、「いじめたくなるから」って理由で外見否定されたらたまったもんじゃないわ。「いじめたくなるから」ブサイクとかデブとかハゲとか言ってやろうか?
あとはこれとか。
大切なこと(いいことも悪いことも)は言わなきゃ伝わらない。
男も女も、「言わなくても察してほしい!」って思ってしまいがちで、好きって伝えなかったり、あるいは「好きって言ってほしい」のを察してほしいと思ったり。
でも、本当は相手に対して「もうちょっと顔がかわいかったらな」とか「背がもうちょっと高かったらな」とか思っていたとしても口に出さなきゃバレないのとまったく同じで、プラスの気持ちも、口に出さなきゃまったく伝わってないと思った方がいい。態度に出しているつもりでも、伝わっていないかもしれない。捉え方は人それぞれだから。
不満でも同じ。「直してほしい」ところがあったとして、勝手に相手が察して直してくれたらエスパーです。
「察する」というのは、相手が自分に対しての善意を持ってくれて初めて成り立つ心の動き。
察してほしいというのは、相手の善意の要求とも言えるわけです。
また、コミュニケーションは情報の発信者と受信者で成り立つので、発信者が発信していなかったら、受信者はいつまでも受け取れない。
「伝わらないなあ」と感じるときは、本当は自分がそもそも「十分伝えていない」のかも。
あとは、「前提の共有」って実はとても侮れない。前提が違うだけで、相手の捉え方が180°変わっちゃうことだってある。
この作品では、凪の元カレが、付き合っていたとき、友達との集まりに凪を招待したのに、「彼女」として紹介してくれませんでした。それに凪はひどく傷つきます。「服装とか態度とか、彼女失格だったのかな」と落ち込みます。でも真相は、彼の友達の一人がひどい失恋に遭ったばかりで、かわいそうで「彼女」として紹介できなかっただけだったのです。
彼の態度の前提が共有されているだけで、凪の心境はどれほど違ったでしょう。
この話、全国の言葉足らずさんたちに読んでほしい。ほんとに。絵柄がポップで少女漫画っぽさがあまりないので、男性でも読みやすいと思います。
(私は自分の彼氏に読ませました)
話が少し逸れましたが、こんな感じで、「それが言いたかった!」が詰まっている作品です。
キャラクターでは、私のお気に入りは凪の元カレの慎二。
凪にとっては、彼は「モラハラまがいに支配してくる」、「自分の体と夜のテク目当て」の、最低彼氏。
まあそれも、彼がそういう自分の見せ方をした結果なのでしょうがないのですが、彼は本当は、凪にゾッコンだったんです。自分のためにまっすぐなストレートヘアにしてくれる健気なところ、料理上手なところ、そして何より、周りの空気を一生懸命読んでがんばっているところが大好きだったんです。ほかのことはうまーく立ち回れるくせに、凪に関しては空回ってばかりの慎二が、とても愛しいです。
たぶん、惚れたのは慎二が先だし、愛情の度合いも慎二が上だったと思います。
一生守るとまで思っていたのですから。
破局してしまったのは、やはり、「言葉足らず」というところと、小3みたいな「好きな子をいじめたい」思考回路のせいですね。いい年してこの思考回路の男子は危ないぞ!!
ひどい言動や行動で嫌がらせして(悪趣味なからかいや冗談を含む)、好きな子が困ったり悲しんだりする顔を見て面白がったり、苦笑いさせて支配欲にひたるんじゃなくて、
好きな子が喜ぶ言動や行動、つまり、「喜ばせ」して、好きな子の笑顔を見て幸せな気持ちになった方が、お互いに幸せになれるんじゃないでしょうか。
彼は凪と別れたあとも、凪が忘れられなくて、登場し続けます。モラハラなど彼女に対してダメな部分はありつつも、基本的に人付き合いが得意な彼が、なぜ人から愛され、営業もうまいのか。彼から受ける言葉一つ一つは、凪が自分を見つめなおすきっかけになっていきます。
凪が今まで周りを見てきた価値観をひっくり返して生まれ変わるために、慎二はこの作品に欠かせないのです(最近は失恋の痛みで、再会するとつらそうですが笑)。
この作品は、「凪がお暇によってつらいことからうまいこと逃げおおせる話」ではなく、
「凪がつらいことに向き合って戦うことで、成長していく話」なんです。
凪は、おそらく心のどこかで自分のことをかわいそうだと思っている。
好き勝手な周りに比べて、気ー遣いな自分は損だし被害者だなと思っている。
でも、本当にそうだろうか?
人を見下しているのは、自分の方ではないのか?
凪がそのことに気づいたとき、私も自分が恥ずかしくなりました。
私も、凪に自分を投影している一人だったから。
でもそれと同時に、うれしかった。
新しい価値観を、凪を通して発見していきたいなと思いました。
この作品は、そうした凪の成長 も見どころです。
凪は「人気者で実力がある営業マン」の慎二の肩書きが好きだったのかも、と自己嫌悪に陥っていましたが、よくよく振り返ると、ちゃんと彼を尊敬していたことに気付きます。(愛していたのかは、正直よくわからないです…)
凪も慎二もお互い未熟なところがあって、コミュニケーションも不足していたことが別れにつながってしまいましたが、お互いに成長することで、いつかよりを戻してくれたらいいなと思っています。
ぜひ、ご一読ください。